添付ファイル付きお問い合わせフォームの安全な設置方法と知っておくべき2つのリスク

「ホームページにお問い合わせフォームをつけたいけど、ついでに資料や写真も添付できるようにしたい」とお考えではありませんか?
お客様から履歴書や不具合のスクリーンショット、見積もり依頼のための資料などを受け取る必要がある場合、添付ファイル機能は非常に便利です。
Webサイト(WordPressなどのCMSを含む)を運営されており、指定の場所にコードを貼り付ける程度の操作ができれば、この機能自体を実装することは十分に可能です。しかし、実装の技術的な難しさよりも、その後のセキュリティ管理と日常業務の負荷にこそ、注意を払う必要があります。
ここでは、添付ファイル機能付きフォームの実現方法と、事業を脅かす可能性のある二つの大きなリスク、そしてその対策について解説します。
添付ファイル機能を実現する3つの方法
複雑なコーディングが不要で、添付ファイル機能付きのフォームを用意する方法は主に3つあります。
| 実現方法 | 特徴 | オーナー様向けのアドバイス |
| A. Webサイトの拡張機能を利用 | WordPressなどのCMSを利用している場合、対応するプラグイン(拡張機能)を導入する方法。 | 最も簡単で低コストです。ただし、他の拡張機能との干渉や、システムのバージョンアップ時にトラブルが起きる可能性を理解しておく必要があります。 |
| B. 専用の外部サービスを利用 | フォーム作成に特化した外部サービスを利用する方法。 | セキュリティ対策が充実しており、ノーコードでデザイン性の高いフォームが作成できることが多いです。複雑なサーバー管理から解放されます。 |
| C. プログラミング(HTML/PHPなど)で自作 | プログラミング言語(HTML・CSS・PHPなど)を用いて一から作成する方法。 | デザインや仕様の自由度は最も高いですが、セキュリティ対策の専門知識が必須であり、初心者には不向きです。 |
技術的な注意点:ファイルサイズ制限は「三重構造」
もし、プラグインや自作コードでフォームを実装する場合、お客様が大きなファイルをアップロードできるようにするには、複数の場所でサイズ制限を調整しなければならないことに注意が必要です。
- Webサーバー側の制限(Nginx/Apache):リクエストのサイズが大きすぎる場合、サーバーはアプリケーションに処理を引き渡すことなく、リクエストを拒否します。Nginxの場合、デフォルトで1MBなど比較的小さな制限が設定されていることがあります。
- PHP側の制限(php.ini):サーバーとは別に、PHP側でもアップロードファイルの最大許容サイズ(upload_max_filesize)と投稿データ全体の最大サイズ(post_max_size)が設定されています。
- フォーム側のバリデーション:お客様に「何MBまで添付可能か」を伝えるためのメッセージとして、コード内に最大サイズ(例:3MB以内など)を設定します。
このうち、サーバー側やPHP側の設定(1と2)を超えた大容量ファイルが送信された場合、フォームで入力した他のテキスト情報(名前、メールアドレスなど)も含め、POSTデータ全体が空になってしまうという問題が発生します。
もしエラーが発生した場合は、フォームの設定だけでなく、サーバーの管理画面やPHP設定ファイル(php.ini)を確認し、ファイルサイズの上限(例:10MBなど)を調整する必要があります。
添付ファイル機能が招く「2つの大きなリスク」と対策

添付ファイルを受け付けるということは、お客様から機密情報を受け取る可能性と、悪意のあるデータを受け取る可能性の両方を意味します。
リスクA:ウイルス感染・情報流出のリスク
フォームを通じてファイルを受け取る際に、最も懸念すべきはセキュリティ上のリスクです。
1. ウイルス・マルウェアの脅威
悪意のある第三者によって、ウイルスやマルウェアが仕込まれた不正なファイルが送りつけられる可能性があります。これにより、社内ネットワーク全体に感染が広がる、または情報漏洩につながる危険性があります。
【必須の対策】ファイル形式の厳格な制限
添付可能なファイル形式を、必要な拡張子のみに限定する(ホワイトリスト方式)ことが非常に重要です。例えば、画像ファイル(jpg, jpeg, png)やPDF(pdf)など、業務上必要なものだけを許可するように設定します。これを怠ると、危険な実行ファイルなどが許可されてしまう場合があります。
2. 大容量ファイルによる業務妨害
メールサーバーやメールボックスには容量の上限があります。上限を超えた大容量ファイルが連続して送られてくると、サーバーの処理が停止したり、メールボックスがすぐに満杯になったりして、重要なメール受信ができなくなる可能性があります。
※通常の場合、容量が満杯になると、それ以降のメールを受け取れません。私の経験では「メールが届かない!」という問い合わせの半分がこの要因です。
【必須の対策】大容量ファイルの取り扱い分離
メールサーバーの上限(一般的に5MB〜20MB程度) を超えるファイルを受け付けたい場合は、ファイルをメールに添付せず、Webサーバー上の一時フォルダにアップロード・保存する設定に切り替えましょう。この場合、ダウンロード用のURLが発行される仕組みを利用すると便利です。
3. データ流出の懸念
お客様から預かった個人情報や機密性の高いファイルが、不正アクセスにより外部に流出するリスクがあります。
【必須の対策】通信の暗号化とファイルの管理
フォームの通信経路は必ずSSL/TLSによる暗号化(URLが https:// で始まること)されている必要があります。また、Webサーバー上にファイルを一時保存する場合は、一定期間後にファイルを消去する仕組みを実装するなど、サーバー容量の節約とセキュリティ維持に努めなければなりません。
リスクB:スパムメールの洪水と業務効率の低下
添付ファイルの有無にかかわらず、フォームを設置すると、自動化されたbotや悪意のある第三者によるスパムメール、大量の営業メールが届くようになります。
これにより、オーナー様や担当者が毎日、これらの不要なメールを精査する時間に追われ、本当に重要な顧客からの問い合わせを見逃してしまうリスクが高まります。
1. 問い合わせフォームの悪用(踏み台)
スパム送信者は、フォームを悪用して第三者のアドレスを返信先に指定し、企業が意図せずスパムメールを拡散する「踏み台」として利用されるケースがあります。これにより、企業のドメインがスパム送信元として認識され、正規のメールまでが届かなくなる(ブラックリストに登録される)リスクが発生します。
2. reCAPTCHAだけでは防ぎきれない
reCAPTCHAのような対策を導入していても、巧妙なスパムや、人が手動で送ってくる営業メールは防ぎきれないことがあります。
【必須の対策】スパム対策機能の導入
- reCAPTCHA v3の導入:ユーザーの行動パターンを分析し、人間には負担をかけずにbotを判定・ブロックする機能は非常に有効です。
- 必須項目と確認画面の設置:botは複雑な入力手順に対応できないことが多いため、氏名や電話番号の入力を必須にしたり、送信前に確認画面を設けることはスパム防止に役立ちます。
- 自動仕分け機能の活用:もし利用しているシステムに、メールの内容や文章パターンを分析し、営業メールやスパムメールを自動でフィルタリングする技術が組み込まれていれば、オーナー様は重要な顧客対応に集中できるようになります。
スパム対策については下記も御覧ください。

まとめ
添付ファイル機能付きのメールフォームは、お客様とのコミュニケーションを円滑にする強力なツールです。
しかし、その利便性の裏側には、ファイルサイズの調整、ウイルス対策、そして大量の迷惑メール処理といった管理上の課題が潜んでいます。特に、小さな会社にとって日々の業務時間を奪うスパム対策と、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策は、事業を継続する上で不可欠です。
難しいコーディング知識がない場合でも、まずはサーバー側のファイルサイズ制限を確認し、ファイル形式の制限を厳格に行うことで、セキュリティリスクを大幅に減らすことができます。安全な環境を整え、お客様からの重要なメッセージを確実に受け取れる体制を構築しましょう。
